1. AIに聞いたあとで、公式サイトを開く

商品やサービスを探すとき、最初から何十ものWebサイトを見比べる必要はなくなりつつある。条件をAIに伝えれば、候補を挙げ、違いを整理し、向いている人まで説明してくれる。以前なら自分で引き受けていた検索と比較の一部を、顧客はAIへ渡し始めている。

それでも、AIが挙げた候補をそのまま買うとは限らない。価格は現在も同じか。自分の地域で使えるか。説明された機能は本当にあるか。どの会社が提供し、問題が起きたときに誰が対応するのか。候補が絞られたあと、顧客は公式サイトや販売ページを開き、最後の確認をする。

AIは、探す手間を減らす。しかし、信じる責任まで引き受けたわけではない。

2. 探索は短くなり、確認は重くなる

日本ダイレクトマーケティング学会が、生成AIの利用経験がある20代から60代の男女1,009人を対象に行った調査では、生成AIを使うようになってから検索回数やWebサイトの回遊・閲覧時間が減ったと感じる回答が示されている。一方で、価格や仕様が実際と異なっていた経験も挙げられ、生成AIへの信頼はSNSを上回ったものの、検索エンジンには及ばなかった。

この結果を、AIが検索を置き換えるという話だけで読むと、企業が考えるべきことはAI上の露出になる。どうすれば回答に引用されるか。どうすれば推薦候補に入るか。それは新しい入口をつくるうえで必要である。

ただ、顧客側で起きている変化はもう少し複雑だ。探索に使う時間は短くなったが、誤った候補を選んだときの責任は顧客に残っている。だから、すべてを読み込む代わりに、判断を左右する箇所だけを確かめる。回遊が短くなるほど、一回の確認が持つ重みは大きくなる。

3. 推薦に入ることと、確認に耐えること

AIの推薦に入ることと、顧客の確認に耐えることは、別の設計課題である。

推薦に入るには、商品やサービスの情報が読み取れること、顧客の問いと結びつくこと、他の情報と照合できることが要る。ここでは、AIが対象を発見し、比較できるように情報を整える仕事が中心になる。

確認に耐えるには、AIが述べた内容と公式情報が一致し、顧客が判断に必要な根拠へすぐ到達できなければならない。対象となる顧客、現在の価格や仕様、選ばれる理由を支える事実、利用条件や限界、運営主体、更新日。こうした材料が奥に隠れていれば、AIがつくった期待は、確認の瞬間にほどけてしまう。

推薦は、信頼の移転ではない。AIが「候補にしてよい」と言ったあとも、その候補を信じる理由は、企業と顧客のあいだで改めてつくられる。

4. Webサイトは、長い廊下でなくてよい

これまで企業サイトは、顧客を入口から順番に案内する設計を取りやすかった。企業の思いを伝え、商品の特徴を説明し、実績を見せ、問い合わせへ導く。顧客がサイトの中を歩きながら理解を深めることを前提に、情報が配置されていた。

しかし、AIとの対話を経て来訪する顧客は、何も知らない状態で入口に立つとは限らない。すでにいくつかの候補を比較し、自分なりの仮説を持ち、その仮説が正しいかを確かめに来る。企業が用意した順路を最初から歩くより、必要な一点を見て判断しようとする。

そのとき、Webサイトに求められるのは、長い廊下よりも、確かめたいことが見える面である。誰に向いているのかを曖昧にしない。現在の事実と、変わりうる情報を分ける。良い面だけでなく、条件や限界も隠さない。実績は数を並べるだけでなく、何を証明しているのかを示す。顧客が短く見ても、判断の筋道が残るようにする。

情報を減らせばよい、という話ではない。情報の量ではなく、判断に使われる順序を変えるということである。

5. 「届く」は、見つかることの先にある

価値が顧客に届くというとき、私たちは発見されることに目を向けやすい。検索結果に現れる。AIの回答に引用される。推薦候補に入る。接点がなければ、価値を選んでもらうことはできない。

けれど、見つかっただけでは、まだ届いていない。AIが顧客の代わりに探索するほど、その後に残る短い確認のなかで、企業の主張と実際の提供がつながって見える必要がある。そこで確かめられなければ、候補には入っても、選択には進まない。

AI時代の情報設計は、AIに読ませるためだけのものではない。AIが見つけたあと、人が自分の判断を引き受けるためのものでもある。

あなたの会社のWebサイトには、AIの推薦を受けた顧客が最初に確かめる材料が、短い滞在の中で見える位置に置かれているだろうか。

参照

日本ダイレクトマーケティング学会「生成AIによる消費者行動の変化」調査 →
PR TIMES、2026年8月17日。生成AI利用経験者1,009人を対象とした調査。